Nature ハイライト

医学:関節炎原因解明の手がかり

Nature 426, 6965

1個の遺伝子に生じたわずか1個の変異が、マウスの自己免疫性関節炎を引き起こす可能性があるという研究が発表された。この研究は、ある種のヒト慢性関節リウマチの原因と分子機構の解明に役立つかもしれない。 坂口志文たちは、SKGマウスという自発的に慢性関節炎を発症するマウス系の研究を行った。このマウスはT細胞シグナル伝達にかかわるZAP-70遺伝子に変異が生じている。その結果、本来ならば発生の途上で消失するはずの反応性T細胞がそのまま残り、関節の炎症を引き起こすのである。 慢性関節リウマチには世界人口の約1%が悩まされている。調べた160人の患者のうち、類似の変異をもっていたのは4人だった。これは、慢性関節リウマチの症例の2.5%でZAP-70の変異が引き金となっている可能性があることを示している。この病気の大半について原因は不明なままである。今回の研究で自己免疫疾患の複雑さがはっきりした。病気の進行には遺伝的要因と環境がともにかかわっているようだと坂口たちは考えている。

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