Nature ハイライト

生態:雄と雌のいたちごっこ

Nature 434, 7032

魚類の研究で、雄と雌との隠れた戦いに雌がどうやって勝利をおさめてきたかが明らかになった。メキシコ中部に生息する魚類のグデア亜科(Goodeinae)では、数種の雄の尾部に雌を誘惑するための黄色い帯模様がある。これらの帯模様は最初のうちは、くねる蠕虫に見えるよう進化したが、今週号の報告によると、雄のこの見え透いたトリックも雌にはずっとお見通しだったのだという。 C M GarciaとE Ramirezの説明によると、この黄色い帯模様はもともと「感覚トラップ」として進化した。つまり、雄は餌そっくりの飾りを身につけることで、雌をより長い時間、自分のそばにとどまらせることができるというのだ。実際、尾部の帯模様をもつ雄は、帯模様のない他の魚を引き寄せて、これらに噛みつかれた。しかし、雄に立派な帯模様がある種の雌は、雄の尾部に噛みつこうとはしなかった。これはおそらく、この雌たちはもう、この模様にだまされなくなってしまったからだろう。 とはいえ、この雌たちは雄たちを完全に無視しているわけではない。雌たちはそれでもなお、もっとも立派な尾部をもつ雄に性的関心を示したのだ。このことからみて、この種の雌たちは現在、配偶者の質を示す証として派手な尾部を選り好みしているのだと考えられる。尾部の帯模様はすでに「正直なシグナル」となっており、その理由はおそらく、こんな派手な装飾を身にまとって他の間抜けな魚たちに噛みつかれても我慢できるのは最上級の雄だけだからだろう、というのが著者たちの出した結論である。

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