Nature ハイライト

生理:昆虫は酸素の毒性を避けるため息を止める

Nature 433, 7025

一部の昆虫は、一度に数時間もしくは数日間ものあいだ呼吸を止めるが、その説明が今回新たに提案された。S K HetzとT J Bradleyは、酸素が多すぎると有毒作用が生じるので、それを避けるために息を止めるのではないかと考えている。 昆虫は、表皮となっているクチクラにある気門と呼ばれる複数の孔を通じて「息」をしている。ところが昆虫の仲間には、周期的にこれらの気門を閉じてしまうものがいる。孔を密閉してしまい、組織が酸素を取り込んだり二酸化炭素を捨てたりできなくするのである。従来の見方では、気門の密閉は水分損失を抑えるのに役立っているか、もしくは外界の高濃度の二酸化炭素に適応するためのものだろうと考えられていた。しかし、実際に観察される気門の開閉パターンからは、こうした説の裏付けは得られなかった。 むしろ昆虫は、組織が酸素を過剰に受け取らないように気門を閉じて、「活性酸素種」と呼ばれる有害物質の生成を最小限に抑えているらしい。HetzとBradleyは、ヤママユガ科のヨナグニサン(Attacus atlas)のさなぎをさまざまな外部酸素濃度において調べ、その組織内の酸素レベルが一定に保たれることを見出した。「彼らの説は、動物の呼吸に関する我々の見方に大きな意味を持つ」とT BurmesterはNews and Viewsで述べている。

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