Nature ハイライト

進化:用いよ、さもなくば失わん

Nature 438, 7065

進化を推し進める主な2つの仕組みは変異と選択だと考えられている。しかし、選択がまったく、あるいはほとんどない場合、変異だけでどの程度進化するものだろうか。K Whiteたちの報告によると、その程度はショウジョウバエでは意外に大きいようだ。ショウジョウバエを実験室で選択圧の低い条件下で交配させていったところ、実際に何百万世代も隔たりがある別種の野生ショウジョウバエどうしの比較から予想される結果よりも、相違がはるかに大きくなることがわかった。  Whiteたちは、最初は同一だったショウジョウバエ系統を12の系統に分けて飼育した。200世代後には、遺伝子のおよそ3分の1で発現レベルにかなりの変動が見られた。この変動は、野生条件で同じ世代数を経た後に見られる値よりもはるかに大きかった。野生のショウジョウバエでは、遺伝子発現にこうした変動を起こす変異の多くが、おそらく選択によって排除されてしまうのだろうとWhiteたちは推測している。  今回の実験では、発生にかかわる重要な細胞タンパク質をコードする遺伝子に関しては、ショウジョウバエの12系統間で200世代後の遺伝子発現にあまり違いがなかったことも明らかになっている。Whiteたちは、こうした遺伝子に生じた変異は選択によって除去されてしまうのだろうと考えている。

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