Nature ハイライト

システム生物学:カチカチと進む時計によって決まる細胞の運命

Nature 503, 7477

遺伝学的に同一な細胞であっても、細胞外からのはっきりしたきっかけに応じて、それぞれ異なる細胞運命をたどることがあるが、見かけ上は確率論的に、つまりランダムに、細胞内で生じる刺激への応答としてこういう現象が起こることもある。遺伝子発現に潜むこのようなノイズは「バグ」なのか、それとも細胞プログラムの重要な部分なのだろうか。R LosickたちとJ Paulssonたちの共同プロジェクトによって、少なくとも枯草菌(Bacillus subtilis)では、こうした偶然には役割があることが明らかにされた。枯草菌の細胞は、移動可能な単細胞状態、および鎖状につながった多細胞状態という状態間を移行する際に、大きく異なる細胞運命を選択することになる。枯草菌は、ランダムで無記憶性の分子機構によって単在期から多細胞期へと切り替えるが、その基盤となる遺伝子ネットワークは、逆向きの移行につながる確率論的ばらつきを減らすようになっていることが分かった。従って、枯草菌は時間情報を記録し、それによって子孫がお互いに協力し合うように強制していることになる。この過程は、発生やがんにおける同じような定量的研究のヒントとなるかもしれない。

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