Nature ハイライト

物性:グラフェン超格子に「ホフスタッターの蝶」現る

Nature 497, 7451

1976年にダグラス・ホフスタッターは、格子中の電子が静電場と磁場にさらされると、量子化をもたらす2つの場に働く相互作用によって決まる特徴的なエネルギースペクトルを示すと予測した。予想されたスペクトルは、蝶の形のモチーフが繰り返されるパターンを示し、これは「ホフスタッターの蝶」として知られている。この現象の実験による実現は、難しいことがわかっていた。磁場と電場に関係する長さスケールが真に競合し、しかも不規則性のない超格子を作製することが困難だからである。今回、この目標が2つの研究グループによって別々に達成された。L Ponomarenkoたちは極めて清浄なグラフェンを、P Kim たちは2層グラフェンをそれぞれ六方晶窒化ホウ素基板上に配置し、窒化ホウ素に対するグラフェン膜の結晶学的角度を精密に調節することによって、モアレ超格子を作製したのである。モアレ超格子の電子輸送測定によって、ホフスタッタースペクトルが存在する明確な証拠が得られた。フラクタルスペクトルが実験的に実証され、このことから、調節可能な量子系における複雑なカオス効果を研究する機会が与えられる。

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