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再生医学:幹細胞で難聴に対処する

Nature 490, 7419

ヒト胚性幹細胞から分化した、スナネズミの蝸牛内の耳ニューロン。
ヒト胚性幹細胞から分化した、スナネズミの蝸牛内の耳ニューロン。 | 拡大する

Credit: Marcelo Rivolta, University of Sheffield

聴神経障害は難聴の1つだが、内耳の感覚有毛細胞は比較的無傷であることが多く、蝸牛の移植のみでは治療効果がない。障害されているのは聴覚伝達路の次の段階で、この段階を支えるらせん神経節ニューロンが損傷しており、こうした感覚ニューロンの喪失に対処できる一般的な治療法は今のところない。今回、ヒト胚性幹細胞から耳の前駆細胞を作り出し、これらの耳前駆細胞が聴覚応答に関与する機能を持った細胞へと分化できることを示している。化学薬品により損傷させたスナネズミの耳へのこれらの耳前駆細胞の移植によって脳幹での聴覚誘発性応答が回復した。したがって、このような手法と蝸牛の移植を併用することで、ある種の難聴に対する細胞を用いた治療が実現できるかもしれない。

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