Nature ハイライト

生理:上皮の「混雑」を整理する

Nature 484, 7395

上皮細胞層がその構造を保持し保護的障壁となるためには、分裂する細胞と死ぬ細胞の数をうまく釣り合わせていく必要がある。B Baumたちは、ショウジョウバエ(Drosophila)でこの過程について調べ、組織の物理的力と細胞消失速度の間に直接的なつながりがあることを明らかにした。組織の中の細胞数が多すぎて過密化した領域では、細胞の一部が細胞間の接着結合を失い、近隣の細胞によって追い出される。このような生細胞の剥離過程は、増殖の際の変動が上皮細胞群に及ぼす影響を和らげ、正常組織の恒常性維持を助けている。生細胞の剥離は、上皮の過形成と細胞浸潤の間をつなぐものとして、がん発生の初期段階に関係している可能性がある。もう1つの論文では、J Rosenblattたちが上皮細胞単層について調べ、強い応力が加えられた部位では死にゆく細胞ではなく、生きている細胞が上皮から押し出されることを見いだしている。押し出された細胞は、生存因子群を失うことにより細胞死を起こす。したがって、このような押し出しは腫瘍抑制機構となる可能性があり、過剰な細胞を排除するのに使えるかもしれない。高レベルの生存シグナル伝達経路を持つがん腫では、押し出しは腫瘍細胞の浸潤を促進する可能性がある。

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