Nature ハイライト

遺伝:遺伝子発現に差が出る仕組み

Nature 463, 7283

1925年に、Timoféeff-RessovskyとRomaschoffは別々に、同一の変異対立遺伝子をもつ個体でも、表現型が変異体になる場合と野生型になる場合があることに気づいた。この現象は不完全浸透とよばれている。その後、遺伝的に全く同一の生物個体が、全く同一の環境下にあっても、異なった特徴を示す場合があるのが明らかになり、遺伝子発現には確率的要素があることがわかってきた。近年、このような「ノイズの多い」遺伝子発現の定量的研究が、微生物で行われてきている。今回A van Oudenaardenたちは、このような定量的研究を多細胞生物の線虫にまで拡大した。彼らは、mRNA分子を1個ずつ数えるという方法を使って、同一の遺伝子型と固定した環境条件下でも、胚での腸細胞の形成を制御する遺伝子の変異によって、ほかの遺伝子の発現レベル、ひいては表現型に大きなばらつきが生じることを明らかにしている。また、遺伝子調節ネットワークが変異に対する個体のロバストさを進化させる仕組みも示唆されている。

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