Nature ハイライト

医学:幹細胞は変化する

Nature 430, 6997

別人になりすまそうとするときには、カツラをかぶるよりも、自分の髪を伸ばした方が見破られにくい。研究者たちは、幹細胞の変化にもこれと同じ原理を使おうとする。特定の細胞への分化を運命づけられた細胞を別の細胞に変化させるには、外見だけの変装をするよりも、シグナルによって細胞をプログラムし直して変身させる方がよいのである。F H Gageたちは、そのままならニューロンや付随するグリア細胞になるはずのマウス神経幹細胞(NSC)が、ヒト内皮細胞(つまり血管の細胞)が存在することによって、神経細胞よりも血管に近い特徴をもつ細胞へと変身するようすを調べた。 幹細胞研究で懸念されることの1つは、2種類の細胞を一緒に培養したときに、細胞の可塑性が思ったほど高くないことである。そうした細胞は、再プログラミングによって変化するのではない。単に2種類の細胞が融合することにより、片方の細胞が、もう一方の細胞の染色体を受け取って、それをさながら変装道具のように使って変化するのである。しかしGageたちは、内皮細胞が死んでいてNSCと融合できない場合でも、シグナルを与えることによってNSCを内皮細胞へと変化させられることを明らかにした。今回の研究は、幹細胞に、いや少なくともマウスのNSCには、可塑性があるとの見方を再び活気づけることだろう。

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