Nature ハイライト

医学:レトロウイルスのインタソーム

Nature 464, 7286

HIV-1のようなレトロウイルスのインテグラーゼタンパク質は、ウイルスゲノムを宿主のゲノムへ組み込む反応にかかわっており、こうして組み込まれたウイルスは細胞内でいつまでも存続できる。この組み込みはウイルス複製に極めて重要であることから、インテグラーゼは薬剤開発の標的となっており、ラルテグラビルやエルビテグラビルなどの複数の阻害剤が治療に用いられていたり、臨床試験中だったりしている。新しい抗レトロウイルス薬の探索には、インテグラーゼの基質であるDNA上に作られるインテグラーゼ複合体(インタソームともよばれる)の構造がわかっていないことが妨げとなっている。今回、プロトタイプ泡沫状ウイルスとして知られる非病原性レトロウイルスの完全長インテグラーゼの結晶構造が、同種ウイルスDNAと複合体を作った状態で決定された。この構造によって、ゲノム組み込みの生化学的反応の詳細が示されただけでなく、現在使われている阻害剤がこの過程にどのような影響を与えるのかも明らかになった。

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