Nature ハイライト

神経:記憶にかかわるシナプス構造

Nature 462, 7275

学習や記憶形成は、脳の回路の構造的変化に関連していると考えられている。この考えの実験的な証拠はこれまでなかなか得られなかったが、今回2つのグループが二光子励起画像法を使って、シナプス網の再編成が安定な記憶保持と密接に関連していることを示した。Xuたちは、餌に前肢を伸ばす課題でマウスを訓練すると、皮質ニューロンに構造的な反応、つまり新たな樹状突起棘の誘導が数時間以内に起こることを見いだした。異なる棘群、したがっておそらくは異なるシナプスの複数のセットが、それぞれ別の運動技能を符号化しているらしい(Letter p.915)。また、学習の間に起こるニューロン間結合の再編成は、安定な記憶維持という背景の上に起こると考えられる。Yangたちは、マウス皮質でシナプス後の樹状突起棘を長時間観察し、学習に応じて棘の可塑性は進行しているにもかかわらず、2種類の安定な棘集団が記憶保持に寄与しているらしいことを見いだした。第一の集団は新たな体験によって作られるもので、その後ずっと選択的に維持される。第二の集団は、出生後の脳発達初期に作られた大規模な集団に由来するものである(Letter p.920)。News and Viewsでは、N ZivとE Ahissarがこの研究の意味を論じ、これらの論文は技能学習の構造的基盤に対する強力な証拠であり、記憶の新たな理論という研究領域を開くものと結論付けている。

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