Cover Story:特集:2025年を振り返る:今年の重要人物10人
Nature 648, 8094
2025年も残すところあとわずかとなった。今週号では、恒例のNature’s 10(今年、科学を形作った10人)を通して、この12カ月を振り返る。今年は、チリのベラ・C・ルービン天文台のデジタルカメラ技術開発で重要な役割を果たしたカリフォルニア大学デービス校(米国)の物理学者Tony Tyson、有人潜水艇で水深9000 mまで潜航して奇妙な生物がひしめく深海生態系を初めて目にした中国科学院深海科学工程研究所の地球科学者Mengran Du、細胞内のタンパク質リサイクル工場であるプロテアソームを調べ、ヒト免疫系の全く新しい側面を明らかにしたワイツマン科学研究所(イスラエル)のシステム生物学者Yifat Merbl、致死性の遺伝性疾患であるハンチントン病の進行を遅らせる治療法をもたらしたロンドン大学ユニバーシティカレッジ(英国)の神経学者Sarah Tabrizi、タンパク質をうまく代謝できない超希少疾患に対して革新的な遺伝子編集治療を受け、治癒したと見られる米国の幼児KJ Muldoonが選ばれている。この他、大規模言語モデルDeepSeekの公開によってAIの世界を揺り動かした中国の投資家Liang Wenfeng、インドにおける研究公正の現状に一石を投じ、同国の高等教育機関のランキング制度に政策変更をもたらしたデータサイエンティストAchal Agrawal、ボルバキア菌感染蚊を大量生産する世界初の工場を立ち上げたオズワルド・クルス財団(ブラジル)の農業研究者Luciano Moreira、数年にわたる厳しい交渉の末に世界初のパンデミック対策条約をまとめ上げた南ウィットウォーターズランド大学(南アフリカ)の公衆衛生当局者Precious Matsoso、そして、米国疾病管理予防センター(CDC)の長官に就任した際に、同僚の解雇や科学的根拠を欠くワクチン政策の強行を命じたトランプ政権に毅然と異を唱えて解任された微生物学者・免疫学者のSusan Monarezが名を連ねる。表紙は、Merblの研究対象であるプロテアソームに着想を得たもので、「10」をかたどる「1」と「0」は、それぞれプロテアソームの側面図と上面図をモチーフにしている。
2025年12月18日号の Nature ハイライト
惑星科学:実験から分かった惑星形成中の水生成過程
惑星科学:タイタンに地下海は存在しなかった
計測学:CP対称性の破れの検証に向けたアクチニウム分子のレーザー分光
量子コンピューティング:シリコン上の11キュービット原子プロセッサー
フォトニックコンピューティング:ホップフィールドネットワークを用いたフォトニックイジングマシン
ナノファブリケーション:メタレンズを用いたナノ構造の並列印刷
化学:マンガン触媒を用いた選択的なメチレン酸化
保全:アマゾン川流域における野生動物の食肉利用の実態
古生物学:空白を埋める初期の竜脚形類の化石
古生物学:「ブルテレの足」の持ち主が明らかに
ゲノミクス:遺伝的多様性が表現型多様性を形作る
古代DNA:中国の新石器時代の要塞都市の慣習を古代DNAでひもとく
植物科学:フロリゲン複合体形成の新たな機構
免疫学:ZBP1誘導性細胞死は宿主の抗ウイルス応答である
分子生物学:ホッキョククジラの長寿の秘訣はDNA修復にあり
がん:大腸がんでの併用ネオアジュバント療法の効果を調べる
がん:プロゲステロン受容体の拮抗薬は乳がんのリスクを減少させる
構造生物学:リボソーム小サブユニットを確実に構築する仕組み
構造生物学:μオピオイド受容体でのGDP放出を捉える

