Nature ハイライト

Cover Story:顎関節の進化:頭蓋化石が明らかにした哺乳類の顎への複雑な進化経路

Nature 647, 8089

哺乳類を他の脊椎動物と区別する特徴の1つは顎である。有顎脊椎動物の多くは下顎に複数の骨を持つが、哺乳類の下顎の骨はたった1つである。この顎構造の進化は、化石記録において、哺乳類を他の脊椎動物と区別する指標として長年用いられてきた。今週号ではF Maoたちが、哺乳類の顎関節の進化に関する新たな詳細を明らかにしている。研究チームは、トリティロドン類のポリストドン(Polistodon chuannanensis、表紙はその想像図)を再検討するとともに、モルガヌコドン類の新属新種Camurocondylus lufengensisを報告し、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)を用いて、哺乳類の祖先であるこれら2種の頭蓋骨を詳細に調べた。ポリストドンの頭蓋化石は約1億6000万年前のもので、これまで知られていなかった顎関節の形状が見られた。Camurocondylusの頭蓋骨はさらに古く、約2億年前の前期ジュラ紀にさかのぼるもので、顎関節の新規な形状が認められた。こうした多様な顎関節は、哺乳類の顎に至る進化の経路が、生態的圧力への応答により独立して生じた複数の新機軸の1つであることを示していると、著者たちは主張している。

2025年11月13日号の Nature ハイライト

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