Nature ハイライト
Cover Story:皮膚付属器の始まり:羽毛の進化に新たな視点をもたらす三畳紀の爬虫類の複雑な「クレスト」
Nature 643, 8074

Stephan Spiekman
表紙は、特徴的な「クレスト」を持つ、中期三畳紀(約2億4700万年前)の爬虫類Mirasaura grauvogeliが、昆虫を狩っている様子を描いた想像図である。今週号ではS Spiekmanたちが、Mirasauraの化石標本を分析し、この小型の爬虫類が、背に沿って複雑な外皮付属器の突起(クレスト)を持っていたことを明らかにしている。羽毛や毛のような複雑な付属器の進化は、哺乳類、爬虫類、鳥類を含む分類群である羊膜類の化石記録で見つかっている、同等に複雑な付属器と結び付けられることが多い。しかしSpiekmanたちは、Mirasauraの場合、この付属器は羽毛と一部類似点があるものの、明確に羽毛ではないことを示した。むしろこのクレストは、脊椎動物の皮膚が驚くべき意外な形で進化・発達し得ることを示す証拠であり、爬虫類の皮膚、さらには羽毛や毛の起源が、従来考えられていたよりも複雑な進化的論点であることを示唆している。
2025年7月31日号の Nature ハイライト
素粒子物理学:バリオンで初めて確認されたCP対称性の破れ
素粒子物理学:初めて観測された反ニュートリノと原子核のコヒーレント弾性散乱
量子光学:高輝度のオンデマンド二光子光源
光物理学:ビーム形状を自在に操作できるメタレーザー
光学材料:深青色領域の安定したLED材料
医用生体工学:コバンザメに着想を得た水中接着システム
液晶:双安定エマルション系の高速スイッチング
人類学:中国の新石器時代の母系氏族社会
神経発生:エンハンサーの違いで生まれるヒトとマウスの脳の差
疫学:西アフリカにおけるエムポックスウイルスの伝播動態
分子生物学:DNAホモポリマー合成によるファージ防御戦略
微生物学:RIFINの一部はNK細胞の活性化免疫受容体にも結合する
免疫学:SP140による二段構えのウイルス防御
がん:コレステロールが膵がん転移の器官選択性を規定する
細胞生物学:サイクリン依存性キナーゼは核と細胞質での有糸分裂シグナルの共役に関与する
がん:抗がん剤シタラビンが強い神経毒性を示す原因
生化学:mRNAのコドンを変えてタンパク質に普通にはないアミノ酸を組み込む
計算生化学:計算だけによって行われた酵素設計
構造生物学:短鎖脂肪酸受容体の活性化と調節