Nature ハイライト

Cover Story:重力波の波紋:遭遇する2つのブラックホールの重力散乱過程を高精度で予測する

Nature 641, 8063

2つのブラックホールが互いに散乱し合うときに、重力波によって運ばれるエネルギーを可視化した図。
2つのブラックホールが互いに散乱し合うときに、重力波によって運ばれるエネルギーを可視化した図。 | 拡大する

Mathias Driesse/Humboldt Universtität zu Berlin

一般相対性理論によれば、ブラックホールや中性子星などの大質量天体が互いにすれ違う際、重力相互作用によって軌道が変化し、重力波が放出される(表紙は、2つのブラックホールが遭遇する際のこの過程を描いたものである)。現在、専用の観測施設によって、連星合体に起因する重力波が日常的に検出されるようになったものの、こうした相互作用の結果を正確に予測することは依然として難しい。今週号ではJ Plefkaたちが、遭遇する2つのブラックホールが互いに散乱し合うときに何が起こるのかを高精度に予測する新たな手法を提示して、この問題に取り組んでいる。著者たちは、摂動論を土台として、問題をスーパーコンピューター上の線形方程式解法に置き換えることで、高次元積分を数百万件にわたって計算した。解析の結果、より単純な近似では現れないカラビ・ヤウ多様体と呼ばれる数学的構造が解に現れることが見いだされた。こうした幾何学的構造は、重力波散乱過程で放出されるエネルギーを記述するのに役立ち、一般相対性理論と幾何学をつなぐ架け橋となる。

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