Nature ハイライト
Cover Story:重力波の波紋:遭遇する2つのブラックホールの重力散乱過程を高精度で予測する
Nature 641, 8063

Mathias Driesse/Humboldt Universtität zu Berlin
一般相対性理論によれば、ブラックホールや中性子星などの大質量天体が互いにすれ違う際、重力相互作用によって軌道が変化し、重力波が放出される(表紙は、2つのブラックホールが遭遇する際のこの過程を描いたものである)。現在、専用の観測施設によって、連星合体に起因する重力波が日常的に検出されるようになったものの、こうした相互作用の結果を正確に予測することは依然として難しい。今週号ではJ Plefkaたちが、遭遇する2つのブラックホールが互いに散乱し合うときに何が起こるのかを高精度に予測する新たな手法を提示して、この問題に取り組んでいる。著者たちは、摂動論を土台として、問題をスーパーコンピューター上の線形方程式解法に置き換えることで、高次元積分を数百万件にわたって計算した。解析の結果、より単純な近似では現れないカラビ・ヤウ多様体と呼ばれる数学的構造が解に現れることが見いだされた。こうした幾何学的構造は、重力波散乱過程で放出されるエネルギーを記述するのに役立ち、一般相対性理論と幾何学をつなぐ架け橋となる。
2025年5月15日号の Nature ハイライト
天体物理学:HD 181327のデブリ円盤で見つかった水氷
量子コンピューティング:キューディットの量子誤り訂正
超伝導:超伝導ギャップを直接測定する
有機化学:硫黄原子と窒素原子の交換による合成簡略化
気候科学:将来の南アジア夏季モンスーンの予測
大気化学:大気中メタンの季節振幅の変化
生態学:植物の葉から取り込まれるマイクロプラスチック
古生物学:ジュラ紀の鉤頭虫類化石
進化遺伝学:マウスの生涯にわたる造血動態
神経回路:さえずりを学ぶ幼鳥の脳内で起きていること
神経回路:ドーパミンで学習強化
神経免疫学:免疫チェックポイント分子TIM-3欠失はアルツハイマー病治療標的となり得る
植物生物学:ヒマワリ半数体の単為生殖による育種の加速
免疫学:皮膚バリア形成に関わる新たな好中球集団
医学研究:超高感度でセルフリーRNAを検出する新規な方法
細胞生物学:RNA上で集まって結合する複数のタンパク質の関係を突き止める
生化学:クロマチンの凝縮と弛緩を調節するヒストンH1
生化学:AMPA受容体のグルタミン酸活性化の構造基盤
構造生物学:色素体/寄生菌型ATP/ADP輸送体の構造