Nature ハイライト

動物:6本脚のダイバーの浮力調整装置

Nature 441, 7090

スキューバダイバーは、水中のどの深さで停止するかを制御できる浮力調整ベストがなければ途方に暮れることだろう。だが、多くの優れた発明品と同様、この装置についても動物界に先例がある。マツモムシとよばれる昆虫は、水に潜る際の深さの調節に同じような戦略を用いており、水中に潜るときに泡をもち込む一方で、その泡に含まれる酸素を呼吸する。しかし人間とは違い、マツモムシは水中にいても泡に酸素を補給できるのである。  マツモムシはこの裏技を使うことで水中深く潜って餌を探せるので、餌を水面だけであさったり、水中の物体にしがみついたりしなくてもすむとP MatthewsとR Seymourは述べている。マツモムシは泡の酸素を使って呼吸している間、体内のヘモグロビンから酸素を遊離させることで浮力を維持している。マツモムシは世界中でみられるが、成虫になっても水中の中層部に住む唯一の昆虫であり、また一生の間ヘモグロビンをもち続ける昆虫もこれだけである。今回の新しい発見で、この2つの特徴のつながりが説明できそうだ。  MatthewsとSeymourは、水中に潜ったマツモムシを敏感な秤の上に置いて、泡中の気体の圧力を測定した。餌をあさるマツモムシが潜り込むときには大きく膨らんだ泡を抱えているが、この浮きを水中へと引っ張り込む作業だけですぐに十分な量の酸素が消費される。そして適当な深さに達したときには、マツモムシのヘモグロビンが飽和になると同時に、浮きも沈みもしないバランス状態が再び作り出されるのである。

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