Nature ハイライト

物理:超伝導体をオン・オフする

Nature 441, 7090

高橋圭たちは、超伝導を「オン・オフ」する巧妙で簡単な方法を報告し、超伝導体を使った新しい電子デバイス創出の道を示している。  研究チームが考案した系では、一部の金属酸化物材料の超伝導が、電流を運ぶ電子の正確な濃度に依存することを利用している。高橋たちは、ニオブドープチタン酸ストロンチウム(Nb‐STO)とよばれる超伝導体に、それと同類のジルコン酸チタン酸鉛(PZT)という金属酸化物材料を使って電子を注入・流出させる方法を見いだした。この「スイッチ可能な」超伝導体は、Nb‐STO薄膜とその上に成長させたPZT層からなっている。  PZTはいわゆる強誘電体材料で、鉄のような強磁性体が特別な方向の磁場をもっているのと同じく、特定の方向を向いた内部電場をもっている。高橋たちは、極めて細い金属針を使って、針の先端が軽くなでた領域でのみPZTの電場方向を変化させることに成功した。これにより、次にはその下層のNb‐STO膜の電子濃度が変化する。この変化によって、任意の(極めて低い)温度で、この膜を超伝導体から非超伝導体、あるいはその逆へと転換できる。その結果、この材料の電気抵抗が大きく変化する。金属針の先端を極細ペンとして使えば、Nb‐STOの平坦な層に超伝導領域を「描く」ことによって、超伝導回路やデバイス構造を設計できる。

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