Nature ハイライト

化学:秩序と無秩序の間に位置する金属

Nature 439, 7075

金属ガラスという言葉は矛盾しているように聞こえるかもしれないが、これは実際に存在し、有用な材料になりそうだと期待されている物質である。H W Shengたちは、金属ガラス中では原子がどのように充填されて、結晶様の構造とランダム構造の間の微妙なバランスが保たれているかを明らかにした。  通常の金属は結晶体であり、原子は果物屋の棚に積まれたオレンジのように整然と規則正しく並んでいる。一方、普通の窓ガラスでは、規則に従っていないがほとんど動いていない群集のように、構成原子が乱雑で無秩序に集合している。金属ガラスも原子配置は無秩序である。だが、通常の金属のような延性もないが、窓ガラスのような脆さもない。丈夫で弾力があるため、ゴルフクラブのヘッドから装甲板まで幅広い使用法が模索されている。  金属ガラスには「長距離」秩序はないが、より短いスケールではある程度の規則性をもつ。各原子のすぐ隣にある原子の配置が結晶内の原子とかなり似ているだけでなく、その次に近い原子やさらに離れた原子も、その配置にはある種の非ランダム性があり、位置もある程度予測できる。  金属ガラスの構造に対していくつかの理論的モデルが提案されてきたが、今回Shengたちの実験とコンピューターモデル研究により、それらが詳細に吟味された。彼らは、金属ガラスでは、原子団が短距離内に幾何学的な多面体形のクラスターを形成しやすいことを示し、さらに、数Åの長さスケールまでの中距離秩序を構成する、いくつかの全く新しい充填様式を提案している。

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