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微生物生態学:窒素を固定する海草の共生細菌

Nature 600, 7887

地中海の海底に広がる海草<i>Posidonia oceanica</i>の藻場。
地中海の海底に広がる海草Posidonia oceanicaの藻場。 | 拡大する

Credit: Damocean / iStock / Getty Images Plus

窒素に乏しい環境で生育する陸上植物は、分子状窒素(N2)を固定する共生細菌を伴っていることが多い。海草は、約1億年前に、海中へ戻った陸上顕花植物から進化したが、共生微生物の存在についてはこれまで報告がなかった。今回W Mohrたちは、海草の最初の共生体として細菌「Candidatus Celerinatantimonas neptuna」を発見し、その特性評価を行ったことを報告している。この細菌は、窒素に乏しい地中海に生育する海草Posidonia oceanicaの根の組織内に生息する。Ca C. neptunaは、N2固定能を有し、糖類と引き換えに宿主にアンモニアとアミノ酸を提供していることが示された。また、Ca. C. neptunaに近縁な細菌が世界各地の沿岸海域に存在することも明らかになり、窒素固定共生が、海草の繁茂を可能にしている一般的な機構であるとともに、顕花植物が窒素に乏しい海洋環境へと進出する際の移行に重要であったと考えられることが示唆された。

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