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植物科学:根の成長のための複雑なオーキシンシグナル伝達

Nature 599, 7884

植物ホルモンのオーキシンは、シュートでは細胞の体積増大を促進して上方への成長を調節し、根では細胞の体積増大を抑制して下方への成長を調節している。オーキシンは、こうした相反する結果をどのように引き起こせるのだろうか。シュートでは、オーキシンはH+ポンプを活性化して、アポプラストを酸性化することで、細胞壁を緩めて成長を促進している。この比較的遅い過程は、オーキシンシグナル伝達のTIR1/AFB受容体が関与するカノニカルな細胞内の分岐経路に依存している。今週号の2報の論文では、オーキシンが根の成長を調節する機構が報告されており、根においては、オーキシンシグナル伝達の別の分岐経路も役割を担っていることが示された。具体的には、根では、オーキシンシグナル伝達の細胞表面に存在するTMK1メディエーターが細胞膜H+-ATPアーゼを活性化して、アポプラストを酸性化する一方、細胞内のTIR1/AFBを介するシグナル伝達が正味の細胞内H+流入を開始させて、アポプラストのアルカリ化を引き起こす。これら2つの相反する機構が同時に活性化することで、根の成長の迅速な調節が可能になっている。

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