Nature ハイライト

コロナウイルス:モデルナ社製とファイザー社製のSARS-CoV-2 mRNAワクチンによって誘導される抗体応答の解析

Nature 592, 7855

M Nussenzweigたちは今回、20人のボランティアのコホートで、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の2種類のmRNAワクチンによって誘導される抗体や記憶B細胞の応答について報告している。彼らは、ワクチンを接種した人たちの血漿中和活性や受容体結合ドメイン(RBD)特異的な記憶B細胞の相対数が、自然感染から回復した人のそれらと同等であることを見いだした。しかし、E484K、N501Y、あるいはK417N/E484K/N501Yの組み合わせをコードするSARS-CoV-2変異株に対する活性では、わずかではあるが有意な低下が見られた。これらの知見と一致して、ワクチンによって誘導されたモノクローナル抗体はSARS-CoV-2を強力に中和し、感染ドナーから単離されたモノクローナル抗体と共通する複数の異なるRBDエピトープを標的にした。スパイクタンパク質(S)の三量体と複合体を形成したモノクローナル抗体の構造解析により、ワクチンとウイルスがコードするSは同様のコンホメーションをとり、同等の機能を持つ抗RBD抗体を誘導することが示唆された。しかし、調べた17種類の最も強力なモノクローナル抗体のうち、14種類の抗体による中和は、K417NやE484K、N501Yの変異によって低下あるいは消失した。ワクチンによって誘導されたモノクローナル抗体存在下でSARS-CoV-2 Sを発現する組換え水疱性口内炎ウイルスを培養した際にも、同じ変異が選択された。この結果は、臨床で使用するモノクローナル抗体では新たに出現する変異株に対して検証を行うべきであり、臨床での有効性が失われる可能性を回避するために、mRNAワクチンを定期的に更新する必要があり得ることを示唆している。

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