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コロナウイルス:mRNAワクチンによって誘導される、SARS-CoV-2およびその流行中の変異株に対する抗体

Nature 592, 7855 doi: 10.1038/s41586-021-03324-6

今回我々は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の、モデルナ社製ワクチン(mRNA-1273)あるいはファイザー社/バイオンテック社製ワクチン(BNT162b2)を受けたボランティア20人のコホートにおける、抗体応答と記憶B細胞応答について報告する。ボランティアは、2回目のワクチン接種の8週後、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(S)や受容体結合ドメイン(RBD)に対して高レベルのIgMやIgG力価を示した。さらに、ワクチン接種を受けたボランティアの血漿中和活性やRBD特異的な記憶B細胞の相対数は、自然感染から回復した人のそれらと同等だった。一方で、E484K、N501Y、K417N/E484K/N501の変異型のSをコードするSARS-CoV-2変異株に対する活性は、わずかだが有意に低下していた。これらのワクチンによって誘導されたモノクローナル抗体はSARS-CoV-2を強力に中和し、感染ドナーから単離されたモノクローナル抗体と共通する複数の異なるRBDエピトープを標的としていた。しかし、我々が調べた17種類の最も強力なモノクローナル抗体のうち、14種類の抗体による中和はK417NやE484K、N501Yの変異によって低下あるいは消失した。注目すべきは、SARS-CoV-2のSを発現する組換え水疱性口内炎ウイルスを、ワクチンによって誘導されるモノクローナル抗体の存在下で培養した際に、これらの変異が選択されたことである。以上より、これらの結果は、臨床で使用するモノクローナル抗体では新たに出現する変異株に対して検証を行うべきであることや、臨床での有効性が失われる可能性を回避するために、mRNAワクチンを定期的に更新する必要があるかもしれないことを示唆している。

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