Nature ハイライト

神経変性疾患:C9orf72の喪失は炎症の抑制を解く

Nature 585, 7823

C9orf72遺伝子内のヘキサヌクレオチド反復の伸長は、家族性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭型認知症(FTD)の最もありふれた原因である。これまでのところ、多くの研究で、C9orf72は機能獲得型の毒性を持つことが示唆されている。R BalohとM McCauleyたちは今回、骨髄細胞のみでのC9orf72の欠失が、C9orf72を持たないマウスで見られる加齢依存的なリンパ肥大や自己炎症を再現するのに十分であることを明らかにしている。また、C9orf72を欠く樹状細胞はI型インターフェロン応答の活性化を示し、C9orf72を欠く骨髄細胞は自然免疫応答の主要調節因子であるSTINGの活性化因子に対して過剰応答することも示された。C9orf72を欠く骨髄細胞ではSTINGの分解が減少しており、STINGを阻害すると、過剰活性化した免疫細胞、脾腫および炎症を抑制することができた。C9orf72を欠くマウスでは、C9-ALS/FTD患者で見られるのと同様に、自己免疫疾患に対する感受性が高いことも分かった。さらに、患者からの血液由来マクロファージ、全血、脳組織でも、I型インターフェロンシグネチャーの上昇が見られ、これはSTING阻害剤で抑制することができた。以上の結果は、C9-ALS/FTD患者では、STING/I型インターフェロンを介した炎症に対するC9orf72による抑制が失われるために、免疫表現型が変化していることを示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度