Nature ハイライト

進化学:ホモ・ローデシエンシスの年代

Nature 580, 7803

1921年、北ローデシアのブロークンヒル(現在のザンビア・カブウェ)の鉱石採掘場でヒト族の頭蓋が出土した。レイモンド・ダートによってアウストラロピテクス・アフリカヌス(Australopithecus africanus)の化石が発見・記載されるまで、この標本はアフリカ全土で唯一の化石ヒト族のものであり、当初はホモ・ローデシエンシス(Homo rhodesiensis)のタイプ標本とされたが、その後は一般に別の古代ヒト族であるホモ・ハイデルベルゲンシス(H. heidelbergensis)に分類されるようになった。しかしその年代は議論の的になっており、50万年前と古いものからそれよりはるかに新しい年代まで、さまざまに提唱されてきた。この頭蓋の発掘場所は採掘し尽くされて当時の堆積物がすでに存在しないことから、堆積物に基づく年代推定が容易でなく、また、標本中の重金属濃度が高い(カブウェでは鉛と亜鉛の採掘が行われてきた)ために放射年代測定法の適用も極めて困難である。今回R Grünたちは、これらの問題を克服して、この頭蓋の年代が29万9000 ± 2万5000年前であると示している。この結果は、ホモ・サピエンス(H. sapiens)が出現し始めたのと同じ時代のアフリカに、複数の古代ヒト族が存在していたことを示唆している。

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