がんゲノミクス:卵巣がんにおける治療中のクローン進化を無細胞DNAを用いて追跡する
Nature 647, 8090 doi: 10.1038/s41586-025-09580-0
薬剤抵抗性の出現は、高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)患者での治療失敗の主な原因である。患者における薬剤抵抗性を調べるために、今回我々は、単一細胞全ゲノム塩基配列解読と、時系列の無細胞DNA内のクローン特異的ゲノム構造バリアントを標的とした高深度塩基配列解読を組み合わせた手法である、CloneSeq-SVを開発した。CloneSeq-SVは、腫瘍のクローン特異的構造バリアントを高感度の内因性無細胞DNAマーカーとして利用し、治療の時間経過を通して、共存するクローン集団の相対的な存在量の測定と進化的解析を可能にする。我々は、本手法を用いて、診断から再発までの数年間にわたって18人のHGSOC患者を調べ、薬剤抵抗性は典型的には、診断時に存在していた単一クローンあるいは少数のクローンサブセットの選択的増殖によって生じることを示す。薬剤抵抗性クローンは、染色体粉砕(クロモスリプシス)や全ゲノム倍加、そしてCCNE1、RAB25、MYC、NOTCH3などのがん遺伝子の高レベル増幅など、解釈可能かつ独特なゲノムの特徴を高頻度で示した。マッチさせた単一細胞RNA塩基配列データの表現型解析では、薬剤抵抗性と関連する上皮間葉転換やVEGF経路の上方調節のようなクローン特異的な転写状態が既に存在していることが明らかになった。注目すべき1つの症例では、クローン特異的なERBB2の増殖が二次標的療法の効果に影響を及ぼし、患者の良好な転帰をもたらした。まとめると我々の知見は、HGSOCにおける薬剤抵抗性状態は診断時には既に存在しており、これが正の選択と再発時のクローン複雑性の低下につながることを示している。我々は、これらの知見が、今後のHGSOC研究において薬剤抵抗性を生じさせないための、進化情報に基づいた適応治療レジメンの検討を促すと提案する。

