気候変動の影響:CO2の社会的コストがより高いことを示唆する包括的な証拠
Nature 610, 7933 doi: 10.1038/s41586-022-05224-9
二酸化炭素の社会的コスト(SC-CO2)は、CO2排出量が1トン増えることで社会にもたらされる損害の貨幣価値の測定単位で、気候政策に情報を与える重要な指標である。SC-CO2の見積もりは、10年以上にわたって政府などの政策立案者によって便益費用分析に用いられており、気候科学、経済学、人口統計学などの分野を利用している。しかし、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による2017年の報告書では、現在のSC-CO2の見積もりがもはや最新の研究結果を反映していないことが浮き彫りになった。この報告書では、SC-CO2の見積もりの科学的基盤、透明性、不確かさの評価を改善するための一連の提言も示された。今回我々は、理論的に一貫したリスク評価を総合的に反映した、確率的社会経済予想、気候モデル、被害関数、割引方法の改善によって、SC-CO2の見積もりが大幅に増えることを示す。我々が推奨するSC-CO2の平均値は、短期の無リスク割引率2%でCO21トン当たり185ドル(2020年の米ドルで5~95%の範囲がCO21トン当たり44~413ドル)であり、この値はCO21トン当たり51ドルという米国政府の現在の値より3.6倍高い。今回の見積もりは、新しいオープンソースの温室効果ガス影響価値推定(Greenhouse Gas Impact Value Estimator;GIVE)モデルに、SC-CO2の見積もりの全ての要素にわたる最新の科学的理解を、NASEMによる短期的な提言に十分に対応する形で組み込んでいる。今回のSC-CO2の値は、政策評価に現在用いられている見積もりと比べてより高く、温室効果ガス削減で見積もられる利益を大幅に増やすため、より厳しい気候政策で予想される正味の利益が増えることになる。

