神経科学:トランスクリプトームの主軸から予測される、皮質介在ニューロンの脳状態による修飾
Nature 607, 7918 doi: 10.1038/s41586-022-04915-7
トランスクリプトミクスによって、大脳皮質の抑制性ニューロンには細かな分子的サブタイプが極めて多様に存在することが明らかになっているが、こうしたサブタイプが、生体脳においてもそれらに対応する多様な活動パターンを持つかどうかは分かっていない。今回我々は、一次視覚野(V1)の抑制性サブタイプが、脳の状態と多様な関連を持ち、それらがトランスクリプトーム多様性の主軸上での位置という単一の要因で組織化されていることを示す。我々はまず、マウスV1のin vivo二光子カルシウム画像化法とトランスクリプトミクスの手法を組み合わせることで、ex vivo切片において選出した72の遺伝子についてmRNAを同定した。次に、皮質第1〜3層で画像化された抑制性ニューロンを、以前規定されたトランスクリプトームのクラスターを用いて、5つのサブクラス、11のタイプ、35のサブタイプからなる、3つのレベルの階層構造へと分類した。視覚刺激への応答はサブクラス間でのみ有意に異なり、Sncgサブクラスの細胞は一様に抑制されていたが、他のサブクラスの細胞は主に興奮していた。脳状態による修飾は、全ての階層レベルで異なっていたが、その大部分はトランスクリプトームの第1主成分から予測可能で、この成分は同時に記録中の細胞との相関も予測した。安静時の脳の振動状態でより発火する抑制性サブタイプは、第1層内での軸索投射の割合が少なく、スパイク幅が狭く、入力抵抗が低く、in vitroで決定されるように順応が弱く、抑制性のコリン作動性受容体の発現が多かった。一方、覚醒時により発火するサブタイプは、これらと逆の性質を示した。このように、多様なV1抑制性サブタイプが脳状態依存的な皮質情報処理をどのように形作っているかは、単純な原理でおおむね説明がつく可能性がある。

