がん:cGAS–STINGは染色体が不安定ながんのIL-6依存的な生存を促す
Nature 607, 7918 doi: 10.1038/s41586-022-04847-2
染色体不安定性(CIN)はがん細胞の進化や転移、治療抵抗性を駆動し、予後不良と関連がある。CINは微小核の原因となり、微小核が破壊されるとDNAが細胞質に放出され、cGASとSTINGが仲介する炎症性シグナル伝達の活性化を誘発する。これら2つのタンパク質はアポトーシスや免疫監視を促進するため、腫瘍抑制因子だと考えられている。しかし、cGASとSTINGは、がんで不活性化されることはまれであり、転移との関係が示されているものの、機能喪失変異が原発腫瘍で生じない理由はよく分かっていない。今回我々は、cGAS–STINGシグナル伝達の不活性化が、CINを示すトリプルネガティブ乳がん細胞の生存を選択的に低下させることを示す。CINはIL-6–STAT3を介したシグナル伝達を誘発し、これはcGAS–STING経路と非カノニカルNF-κB経路に依存している。培養のトリプルネガティブ乳がん細胞で、IL-6受容体(IL-6R)を標的とする臨床使用薬剤のトシリズマブによりIL-6シグナル伝達を阻害すると、乳がん細胞の増殖が選択的に阻害された。さらに、染色体の不安定な腫瘍の増殖は、CINの見られない腫瘍と比較して有意に遅いことが分かった。特に、この標的化可能な脆弱性が、in vitroおよびin vivoでIL-6やIL-6Rを高レベルで発現するタイプのがん全体で保存されていることは重要である。以上より我々の研究は、cGAS–STINGシグナル伝達の腫瘍発生促進性形質を実証するとともに、cGAS–STING経路が原発腫瘍でほとんど不活性化されない理由を説明している。トシリズマブのリパーパシングは、CINを示しIL-6Rを過剰発現するがんの治療戦略となる可能性がある。

