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コロナウイルス:オミクロン株の感染はワクチン接種者においてデルタ株に対する抗体免疫を増強する

Nature 607, 7918 doi: 10.1038/s41586-022-04830-x

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン株の感染が、ワクチン接種歴の有無で、以前優勢であったデルタ(B.1.617.2)変異株に対する防御をどの程度誘導するかは明らかではない。今回我々は、南アフリカ共和国でSARS-CoV-2のオミクロン亜系統BA.1に感染した39人において、複数の変異株に対する中和能を測定した。測定は、発症後中央値6日(四分位範囲3〜9日)から開始し、BA.1による中和免疫ができる時間を考慮して、最後のフォローアップ試料が得られる[(発症後中央値23日(四分位範囲19〜27日)]まで継続した。参加者のうち15人は、ファイザー社のBNT162b2あるいはジョンソン・エンド・ジョンソン社のAd26.CoV2.Sを接種した後にBA.1にブレイクスルー感染しており、24人はワクチン非接種者であった。BA.1の中和について、FRNT50(50% focus reduction neutralization test)の幾何平均抗体価は、ワクチン接種者では登録時の42から最後に経過観察した時点で575に(13.6倍)増加し、ワクチン非接種者では46から272(6.0倍)に増加した。デルタ株ウイルスの中和も、ワクチン接種者では192から1091(5.7倍)に、ワクチン非接種者では28から91(3倍)に増加した。最後の時点で、BA.1に感染したワクチン非接種者では、BA.1以外のウイルスに対する中和の絶対値が低く、BA.1に感染したワクチン接種者と比較して、BA.1の中和は2.2分の1、デルタ株の中和は12.0分の1、ベータ株の中和は9.6分の1、従来株ウイルスの中和は17.9分の1、オミクロン亜系統BA.2の中和は4.8分の1であった。これらの結果は、ワクチン接種とオミクロン株BA.1感染により作られたハイブリッド免疫は、デルタ株や他の変異株を防御するであろうことを示している。一方で、オミクロン株BA.1感染のみでは、中等度の増強はあるものの交差防御は限定的であった。

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