細胞生物学:真核細胞の細胞周期の中核となる制御原理
Nature 607, 7918 doi: 10.1038/s41586-022-04798-8
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、真核細胞の細胞周期制御の中核であり、さまざまなサイクリン–CDK複合体を形成してDNA複製の開始(S-CDK)や有糸分裂の開始(M-CDK)に関わっている。しかし、細胞周期の各事象がどういう時間的順序で起こるかをサイクリン–CDK複合体が決める法則については、議論が続いている。あるモデルでは、S-CDKとM-CDKは機能的に専門化していて大幅に異なる基質特異性を持ち、細胞周期の異なった事象を実行すると考えている。別のモデルでは、S-CDKとM-CDKは互いに相手の予備となることができ、共に全てのCDK活性の供給源として機能すると考えている。このモデルでは、CDKの基質特異性ではなく、CDK活性の上昇が細胞周期の事象の順序を決める。今回我々は、細胞周期制御の核心についてのこれら2つの見方を融和させた。ホスホプロテオミクスアッセイを使って分裂酵母のin vivoでのCDK活性を調べたところ、S-CDKとM-CDKの基質特異性は極めてよく似ていることが分かり、S-CDKがS期だけ、M-CDKが有糸分裂期だけに完全に特化してはいないことが明らかになった。通常、S-CDKは有糸分裂を推進できないが、プロテインホスファターゼ1を中心体から除去すると、有糸分裂を推進できるようになる。つまり、in vivoでS-CDK活性を上昇させるだけで、S-CDKとM-CDKの基質特異性の違いを乗り越えるには十分であり、S-CDKはM-CDKの機能を果たせるようになる。このように我々は、細胞周期の制御に関する2つの相反する見方を合体させ、細胞周期の主要な推進力の基盤となっているのは、主として細胞周期中のCDK活性の量的増加であり、それにS-CDKとM-CDKの触媒特異性の質的な違いが組み合わさっているものの、その寄与はわずかで克服可能であることを明らかにした。

