遺伝学:脂質のゲノムワイド関連解析における遺伝的多様性の力
Nature 600, 7890 doi: 10.1038/s41586-021-04064-3
血中脂質レベルの上昇は遺伝性のある心血管疾患のリスク因子であり、食餌パターンや薬剤の使用の差異により、その有病率は世界中でさまざまである。心臓病は、特に低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルを低下させることにより、予防と治療が進歩しているが、世界の主要な死因であり続けている。血中脂質レベルのゲノムワイド関連解析(GWAS)から、心血管疾患の生物学的および臨床的に重要な手掛かりや、新しい薬剤標的が得られている。しかし、これまでのGWASの大部分はヨーロッパ系の集団で行われていて、他の祖先系集団における脂質レベルの変動に関与する遺伝的バリアントは見逃されてきた可能性がある。これらには、アレル頻度、効果量、連鎖不平衡パターンの差異が含まれる。今回我々は、非ヨーロッパ系の35万人を含む、約165万人における脂質レベルについて、複数の祖先系集団にわたるゲノムワイドな遺伝的探索のメタ解析を行った。非ヨーロッパ系の集団を研究することで得られた利得を定量化し、サンプルサイズが比較的小さい場合でも、他の祖先系集団の人を広く解析に追加することを支持する証拠が示された。ヨーロッパ系の人の数を増やして研究するよりも、多様性を増すことで、機能的バリアントのファインマッピングや多遺伝子性の予測のポータビリティー(移植性)が大幅に改善されることが分かった(7つの祖先系集団の約29万5000人での評価)。また、発見された座位や祖先系集団特異的なバリアントの数において、わずかな利得も得られた。GWASは、遺伝子や基礎的生物学的性質の特定を超えて、遺伝的バリアントの予防および精密医療での使用に重点を拡大していることから、参加者の多様性が増すと、実地医療における多遺伝子性スコアのより正確で公平な適用につながると予想される。

