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進化遺伝学:英国におけるSARS-CoV-2エピデミックのゲノム再構築

Nature 600, 7889 doi: 10.1038/s41586-021-04069-y

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の進化に伴って新たな変異株が出現しており、疫学的な特性解析が適時必要となっている。今回我々は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ゲノミクス英国コンソーシアムによって作成された詳細なゲノム監視データを用いて、2020年9月〜2021年6月の、英国の315の各地方自治体における異なる71系統の動態を再構築した。今回の解析によって、2020年初秋にピークとなった一連の準エピデミック、それに続くB.1.1.7/アルファ株の急激な伝播が明らかとなった。2020年11〜12月に実施された2回目の全国的ロックダウンと地域ごとの段階的制限の際には、他の系統が減衰したが、アルファ変異株は増加した。3回目のより厳しい全国的ロックダウンでは、アルファ株が抑えられ、2021年初頭にはほぼ全ての他の株も排除された。一方で、ある一連の変異株(そのほとんどは、スパイクE484K変異を有する)はこれらの傾向から外れて存続し、徐々に割合を増加させた。しかし、持続的な持ち込みがあったことを考慮すると、これらの変異株の伝播性がアルファ株の伝播性を上回っていた可能性は低いことが分かった。さらに、B.1.617.2/デルタ株は、英国に繰り返し持ち込まれ、2021年初夏に急速に増加し、2021年6月26日に採取されたSARS-CoV-2ゲノムの約98%を占めていたことが分かった。

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