Article

生化学:ホルモテロールが結合したβ1アドレナリン受容体へのβアレスチンの連結の分子基盤

Nature 583, 7818 doi: 10.1038/s41586-020-2419-1

β1アドレナリン受容体(β1AR)はGタンパク質共役受容体(GPCR)で、ヘテロ三量体Gタンパク質であるGsと結合する。Gタンパク質が仲介するシグナル伝達は、GPCRキナーゼ(GRK)による受容体C末端のリン酸化とβアレスチン1(βarr1、別名アレスチン2)の結合により終結する。このとき、βarr1はGsに取って代わり、MAPキナーゼ経路を介したシグナル伝達を引き起こす。Gタンパク質、もしくはアレスチンのどちらか一方を介して選択的なシグナル伝達を引き起こす合成アゴニストの性能は、バイアス型アゴニズムとして知られていて、創薬に重要だが、それは治療効果は1つのシグナル伝達カスケードだけから生じると考えられ、他の経路は望ましくない副作用を仲介しかねないからである。今回我々は、アレスチン結合の分子基盤を解明するために、バイアス型アゴニストであるホルモテロールと結合したβ1AR–βarr1複合体の脂質ナノディスク中の構造をクライオ電子顕微鏡により明らかにし、またホルモテロールが結合したβ1ARが、Gタンパク質を模倣したナノボディNb80と結合した状態の結晶構造を決定した。βarr1とβ1ARは、Gsとβ2ARの結合とは異なる様式で結合していて、βarr1のフィンガーループは細胞内表面上のより狭い割れ目を占拠しており、その位置は、GsのC末端にあるα5ヘリックスと比べると、受容体の膜貫通ヘリックスH7の方により近い。βarr1のフィンガーループのコンホメーションは、ロドプシンと結合している視覚アレスチンのフィンガーループがとっているコンホメーションとは異なっている。βarr1と結合したβ1ARの構造には、Nb80と結合したβ1ARと比べると、細胞外ループ3やヘリックスH5およびH6の細胞質側末端の内向きの移動など、かなりの違いが見られる。β1ARのオルソステリック結合部位では、H5ヘリックス中の2つのセリン残基とホルモテロールとの間の相互作用が弱くなっているのが観察され、ホルモテロールのβ1AR–βarr1複合体に対する親和性は、β1AR–Gs複合体に対する親和性より低いことが分かった。β1ARが形成するこれら2種類の複合体の構造の違いは、βアドレナリン受容体でのシグナル伝達を偏らせることのできる小分子を設計するための基盤となる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度