材料科学:クライオSTEMトモグラフィーによって明らかになったフェリチンの結晶化機構
Nature 579, 7800 doi: 10.1038/s41586-020-2104-4
タンパク質の結晶化は、構造生物学、疾患研究、製薬において重要である。最近、タンパク質、有機物、無機物の結晶化過程において、初期に非晶質前駆体相が形成される非古典的結晶化がよく起こることが認識されるようになった。このため、溶媒和した初期の低密度非晶質凝集体が形成された後、高密度化して核生成につながるという2段階核生成理論が提案されている。この考えは、溶液中で形成される結晶核の密度と構造が最終的な結晶状態のものと同じであることを意味する古典的核生成理論とは異なっている。最近、この古典的経路が関わるタンパク質結晶化機構が直接観察された。しかし、非古典的なタンパク質結晶化の分子機構はまだ立証されていない。非晶質前駆体の性質や、結晶化が前駆体内で起こるかどうか(もし起こるなら、秩序が分子レベルでどのように発達するのか)を確認するには、結晶化過程の分子レベルでの三次元(3D)画像化が必要になる。今回我々は、クライオ走査型透過電子顕微鏡トモグラフィーを用いて、フェリチン凝集体をさまざまな結晶化段階で観察し、次に同時反復再構成法を用いた3D再構成によって、結晶化の3D像を分子分解能で得た。調べた凝集体では、結晶秩序が徐々に増すにつれて、表面から内部に向けて秩序と密度の両方が増大した。古典的核生成過程に特有の高秩序な微小構造体は観察されず、1個の非晶質凝集体内において数個の秩序ドメインの出現が時折観察された。これは、古典的核生成理論でも2段階核生成理論でも予測されていない現象である。今回の分子レベルの分析結果は、脱溶媒和が連続的秩序発達機構の駆動要因であることを示唆している。この考えは、現在の核生成モデルの枠を超えるものであるが、さまざまなタンパク質結晶化機構と矛盾しない。

