Article

分子生物学:アルコールに由来するDNA架橋は2つの異なる機構により修復される

Nature 579, 7800 doi: 10.1038/s41586-020-2059-5

アセトアルデヒドは非常に反応性が高く、DNAを損傷する代謝物で、アルコールを摂取した際に産生される。アジア人ではアセトアルデヒドの解毒が十分に行われないことが多く、これがアルコールに関連するがんと関連付けられている。アセトアルデヒドが誘導する損傷から細胞を守っているのはDNA架橋修復で、この修復が障害されると、ファンコニ貧血(FA)が引き起こされる。この病気では血液細胞が産生できなくなり、がんの素因となる。アセトアルデヒド解毒系とFA経路の不活性化が組み合わさると変異が誘発され、悪性腫瘍が加速し、血液幹細胞の迅速な消耗が起こる。しかし、アセトアルデヒドによって引き起こされるDNA損傷がどのようなものなのか、またそれはどのようにして修復されるのかという重要な疑問は、まだ解明されていない。今回我々は、アフリカツメガエル(Xenopus)の卵抽出物を用いて、アセトアルデヒドにより誘発されるDNA鎖間の架橋を生成させ、その修復機構を明らかにした。この損傷を修復する、複製と連携した経路が2つ見つかった。第一の修復機構はFA経路で、化学療法薬シスプラチンによって引き起こされる鎖間架橋の修復に使われる機構とよく似た、切除による修復である。しかし、アセトアルデヒドが誘導する架橋の修復では、シスプラチンが誘導する架橋の修復に比べて変異頻度が高くなり、変異スペクトルが変化する。第二の修復機構は複製フォークの収束を必要とするが、DNA切断は起こらず、代わりにアセトアルデヒド架橋自体が破壊される。この架橋修復は、YファミリーのDNAポリメラーゼREV1によって完了し、第一の機構とは別の変異スペクトルが生じる。これらの結果は、内在性の代謝物やアルコール由来の代謝物が引き起こすDNAの鎖間架橋の修復経路を明確にしており、切除とは無関係な修復機構の存在が突き止められた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度