Letter
化学:ニッケル触媒による塩基を用いない酸フッ化物の脱カルボニル型鈴木–宮浦カップリング
Nature 563, 7729 doi: 10.1038/s41586-018-0628-7
有機ホウ素求核剤とハロゲン化アリール求電子剤の鈴木–宮浦クロスカップリングは、有機化学や医薬品化学において最も広く用いられている炭素–炭素結合形成反応の1つである。この変換に伴う主な課題は、一般的に外部からの塩基の添加を必要とすることである。この塩基は、有機ホウ素求核剤と金属触媒の間でトランスメタル化(金属交換反応)を可能にするという役割を持つ。添加された塩基は多くの有機ホウ素基質の競争的分解を促進するため、この塩基添加の必要性によって反応に適用できる基質の範囲が制限される。そのため、塩基による副反応を減らす戦略に重点を置いて、多くの研究が行われてきた。これまでの取り組みは主に、戦略的にマスキングした有機ホウ素試薬を設計して塩基による分解を遅くするか、活性の高いパラジウムプレ触媒を開発して塩基による分解経路よりもクロスカップリングの方を速く進めるかのどちらかに重点を置いていた。魅力的な代替手法としては、外部からの塩基なしに鈴木–宮浦型反応の進行を可能にする触媒と求電子剤の組み合わせなどがある。今回我々は、この手法を用いて、ニッケル触媒によるアリールボロン酸と酸フッ化物のカップリングを開発した。酸フッ化物は、容易に入手できるカルボン酸からin situで形成される。この組み合わせの触媒と求電子剤によって、「トランスメタル化活性」を持つアリールニッケルフッ化物中間体が触媒サイクル中で直接生成されるという機構的複合系(mechanistic manifold)が可能になる。そのため、この変換は外部からの塩基を必要とせず、塩基に敏感なさまざまなボロン酸や生物活性カルボン酸に適用できる。

