生化学:METTL3–eIF3hによるmRNAの環状化は翻訳を亢進して発がんを促す
Nature 561, 7724 doi: 10.1038/s41586-018-0538-8
mRNAのN6-メチルアデノシン(m6A)修飾は、遺伝子発現の重要な調節因子としてさまざまな発生過程や生物学的過程に影響を及ぼすことが分かってきており、m6Aの恒常性の変化はがんにも関連している。m6A修飾はMETTL3により触媒され、多数のmRNAの3′非翻訳領域の終止コドン周辺部位に多く見られる。METTL3は翻訳を促進できるが、その機構やこの過程の意義は解明されていない。今回我々は、METTL3が翻訳を促進するのはレポーターmRNAの終止コドン近くに結合したときに限られており、リボソームのリサイクリングと翻訳制御のためにmRNAループを形成するという機構が裏付けられることを明らかにする。電子顕微鏡で個々のポリリボソームのトポロジーを調べたところ、5′キャップ結合タンパク質に極めて近い位置に1個のMETTL3凝集体があることが判明した。そして、METTL3と真核生物翻訳開始因子3のhサブユニット(eIF3h)との間に、直接的な物理的・機能的相互作用があることが分かった。METTL3は、ヒトの原発性肺腫瘍でm6A修飾されているBRD4(bromodomain-containing protein 4)をはじめとする多数の発がん性mRNAの翻訳を促進する。このMETTL3とeIF3hの相互作用は、翻訳の亢進、高密度のポリリボソームの形成、発がん性形質転換に必要である。METTL3を欠失させると、肺がん細胞の腫瘍形成能が抑制され、細胞はBRD4阻害に感受性になる。これらの知見から、mRNAのループ形成を基盤とする翻訳制御機構が明らかになり、METTL3–eIF3hが、がん患者の治療標的になり得ることが分かった。

