免疫学:ヒトの呼吸上皮前駆細胞におけるアレルギー性炎症の記憶
Nature 560, 7720 doi: 10.1038/s41586-018-0449-8
バリア組織の機能不全は、ヒトの慢性炎症性疾患の基本的特徴である。分泌細胞や繊毛細胞など、特化した上皮細胞のサブセットは、基底幹細胞から分化して、共同で上気道を保護する。アレルギー性炎症は、上気道での2型免疫の持続的な活性化によって生じることがあり、鼻炎から重症の鼻ポリープまでのさまざまな重症度の慢性鼻副鼻腔炎を引き起こす。基底細胞過形成は重症疾患の特徴であるが、これらの前駆細胞がヒトにおいて臨床症状やバリア組織の機能不全に関与する仕組みは分かっていない。今回我々は、大量並列単一細胞RNA塩基配列解読用のSeq-Well法を用いて、慢性鼻副鼻腔炎のスペクトラム全域にわたる外科的初代試料(1万8036細胞、n = 12)のプロファイリングを行い、ヒトの呼吸上皮細胞、免疫細胞、ストローマ細胞および2型炎症性疾患由来のサブセットのトランスクリプトームを報告する。また、主要なメディエーターをマッピングした。我々は、鼻腔内の擦過標本(1万8704細胞、n = 9)との比較を行い、分泌細胞について、コア、健康、炎症、ポリープのシグネチャーを決定した。非ポリープとポリープの細胞生態系の上皮区画間には顕著な差異が認められることが明らかになり、これにより、基底細胞過形成、それと同時に起こる腺細胞の減少、分泌細胞の抗菌性の発現の表現型移行によって特徴付けられる、ポリープにおける細胞多様性の全体的な減少が突き止められ、検証された。ポリープでは基底前駆細胞の異常な分化軌跡が検出され、我々は、細胞固有の因子、エピジェネティックな因子、外因性因子がポリープ基底細胞をこうした運命拘束されない状態へと固定していると提案する。さらに我々は、ex vivoで培養された基底細胞は、IL-4/IL-13に曝露された固有の記憶を保持していることを機能的に実証し、また、IL-4受容体αサブユニットの臨床的遮断がin vivoで基底細胞や分泌細胞の状態を変化させる可能性を検討した。以上から、基底細胞の機能的な移行から生じる上皮多様性の減少が、バリア組織の2型免疫が仲介する機能不全の重要な特徴であることが見いだされた。今回の結果は、上皮幹細胞はアレルギー記憶の保存場所として機能することによって、ヒトの疾患の持続に関与している可能性を実証している。

