気候科学:弱い大西洋鉛直循環によって増強される全球表面の温暖化
Nature 559, 7714 doi: 10.1038/s41586-018-0320-y
古気候学から得られた証拠は、北半球の急激な寒冷事象は大西洋の南北方向の鉛直循環(AMOC)の弱化とつながりがあり、こうしたAMOCの弱化は淡水の過剰な流入に起因する可能性があることを示唆している。しかし、こうした知見の多くは、産業革命以前の条件下でのモデル計算から得られており、温室効果ガスの急速な排出を伴う現代には当てはまらない可能性がある。もし当てはまるとすれば、1975~1998年に見られたようなAMOCの弱化によって、北半球は寒冷化したはずである。本論文では、AMOCが最も弱かった期間に、表面が寒冷化したのではなく急速に温暖化したことを示す。より一般的には、AMOCの主要な役割は、温室効果ガスによる加熱の存在下において、表面の熱を北向きに輸送してヨーロッパと北米を温暖化させることから、熱を大西洋深部に蓄えて地球全体の表面の温暖化を緩和することへと変化した。1990年代半ばから2000年代初めのAMOCの加速期においては、AMOCは全球的に過剰な熱の約半分を蓄え、地球温暖化の減速に寄与した。対照的に、2004年に係留観測が始まって以来、AMOCと海洋による熱の吸収は弱まっている。いくつかの独立した指標に基づく今回の結果は、1940年代以降のAMOCの変化が、人為的に強制された傾向ではなく数十年変動によって最もよく説明されることを示している。亜寒帯北大西洋の現在の先行指標は、進行中のAMOCの弱化が終りつつあることを示唆している。我々は、AMOCが最も弱い期間は長引き、おそらく約20年続くと予想する。これまでのパターンが続くとすれば、結果として海洋による熱の吸収が低レベルになって、全球表面が急速に温暖化する期間が現れるであろう。

