がん遺伝学:健康な人における急性骨髄性白血病のリスク予測
Nature 559, 7714 doi: 10.1038/s41586-018-0317-6
急性骨髄性白血病(AML)の発生率は加齢とともに上昇し、また65歳以降に診断された場合の死亡率は90%を超える。ほとんどの症例は、検出可能な初期症状を全く示さずに発症し、患者は通常、骨髄不全の急性合併症を示す。このようなde novoのAML症例が現れる前には、前白血病性の造血幹・前駆細胞(HSPC)で体細胞変異が蓄積し、クローン性増殖が起こることが多い。しかし、AMLを発症しない健康な人でも、頻発するAML変異が加齢とともにHSPCに蓄積し、この現象は加齢に伴うクローン性造血(ARCH)と呼ばれている。今回我々は、高深度塩基配列解読法によりAMLにおいて変異が頻発する遺伝子を解析し、AMLの発症リスクが高い人と良性ARCHの人を識別した。我々は、前AML群の95人、およびこれと年齢や性別が対応する選択を行っていない414人(対照群)について、その末梢血細胞を解析した。前AML群ではAMLと診断される平均6.3年前に末梢血細胞が採取されている。前AML症例は対照群とは異なっていて、対照群よりも試料当たりの変異数が多く、バリアント対立遺伝子頻度が高いことから、クローン性増殖が増強されていることが示され、また、特定の遺伝子に変異が豊富に存在していることが分かった。遺伝的パラメーターを用いて、AMLの無病生存を正確に予測するモデルを導いた。このモデルは、29の前AML症例と262の対照例からなる独立した1コホートにおいて検証された。AMLはまれなため、我々は大規模な電子健康記録データベースを用いたAML予測モデルも開発し、リスクが高い人を突き止めた。総合的に我々の知見から、前AMLとARCHを悪性形質転換の何年も前に識別できる可能があるという概念実証が示された。これによって、将来的にAMLの早期発見と追跡が可能になり、治療介入の際に有用な情報となるかもしれない。

