気候科学:始新世において同時に生じた熱帯と極域の温度変化
Nature 559, 7714 doi: 10.1038/s41586-018-0272-2
気候が温暖で大気中の二酸化炭素濃度が高かった期間の古気候の再構築は、将来の気候変動をよりよく予測するのに重要である。深海と高緯度域の古温度の代理指標からは、始新世(5600万~3400万年前)には、過去6600万年間で最も温暖だった期間があり、その後寒冷化して南極に氷冠が形成されたことが示されている。始新世に極域が温暖だったことは十分に立証されているので、全球平均気温の変化やその極域増幅などの重要な気候パラメーターの推移の定量化を主に妨げているのは、熱帯の温度について質の高い連続的な再構築が行われていないことである。本論文では、大西洋の堆積物に適用したバイオマーカーによる古水温測定に基づいて、始新世の赤道域の海面温度の連続的な記録を提示する。我々は、この記録と既存のまばらなデータを組み合わせて、複数地点の複数の代理指標を積み重ねた始新世の熱帯の2600万年間にわたる気候変化を構築した。その結果、長期的な気候傾向と短期間の事象の両方の影響下において、熱帯と深海の温度の変化が同様であったことが見いだされた。これは、海洋循環の変化ではなく温室効果ガスによる強制が始新世の気候の主な駆動要因だったという仮説と一致する。また、熱帯と深海の温度の間には強い線形関係が観察され、これはほぼ氷結が見られなかった始新世を通して極域増幅係数が一定だったことを示唆している。完全な結合気候モデルによるシミュレーションとの定量的な比較からは、産業革命前の14.4°Cに対して、前期始新世、中期始新世前期、中期始新世後期、後期始新世の全球平均気温が、それぞれ約29、26、23、19°Cであったことが示された。さらに、代理指標とモデルに基づく気温の見積もりと利用できる二酸化炭素の再構築結果を組み合わせたところ、始新世の地球システムの気候感度は68%の確率で、0.9~2.3 K W−1 m−2であったという見積もりが得られ、これはこれまでの見積もりの上限と一致する。

