がん:代謝酵素PFKFB4は転写コアクチベーターSRC-3を活性化して乳がんの発生を促す
Nature 556, 7700 doi: 10.1038/s41586-018-0018-1
細胞の代謝と転写プログラムの両方が変化することが、急激な増殖と転移を継続するがんの特徴である。しかし、代謝の再プログラム化と転写調節との相互作用を制御する機構は解明されていない。今回我々は、代謝酵素である6-ホスホフルクト-2-キナーゼ/フルクトース2,6-ビスホスファターゼ4(PFKFB4)が、発がん性のステロイド受容体コアクチベーター3(SRC-3)を活性化し、転写の再プログラム化を調節することを明らかにする。内因性SRC-3の転写応答を変化させ得るキナーゼを特定するため、RNA干渉法によるキノーム規模のスクリーニングを行った。その結果、強力な解糖促進因子を合成する調節酵素PFKFB4が、エストロゲン受容体を共調節するSRC-3のロバストな促進因子であることが分かった。PFKFB4はSRC-3のセリン857をリン酸化してその転写活性を促進するが、PFKFB4の抑制や、リン酸化されないSer857Ala変異型SRC-3の異所発現により、SRC-3を介した転写変化が起きなくなる。機能的には、PFKFB4の働きによるSRC-3活性化は、グルコースの流れをペントースリン酸経路に向かわせ、転写調節により酵素トランスケトラーゼの発現を亢進させて、プリン合成を可能にする。さらに、SRC-3の標的として、プリン代謝に関わる2つの酵素、アデノシン一リン酸デアミナーゼ-1(AMPD1)とキサンチンデヒドロゲナーゼ(XDH)を特定した。ただし、この2つがプリン合成に直接的に関わっているかどうかは分からない。機構としては、SRC-3のSer857がリン酸化されると、SRC-3と転写因子ATF4が標的遺伝子プロモーターへと安定的に誘導されるようになるために、SRC-3とATF4の結合が促進される。SRC-3やPFKFB4を除去すると、マウスの乳がんの増殖が抑制され、同所性移植からの肺転移が起こらず、この結果はSer857Ala変異体の結果と同様だった。エストロゲン受容体陽性の腫瘍では、PFKFB4とリン酸化SRC-3のレベルが上昇し、相関する。一方、基底細胞型サブタイプの乳がん患者では、PFKFB4とSRC-3が乳がんの生存率の低さに関連して広く見られるタンパク質シグネチャーを促していた。これらの知見は、ワールブルグ経路の酵素PFKFB4が分子的な支点として働き、SRC-3を刺激して糖代謝と転写活性化を共役させ、アグレッシブな転移腫瘍の増殖を促進することを示唆している。

