幹細胞:Mycエンハンサークラスターは正常および白血病の造血幹細胞の階層構造を調節する
Nature 553, 7689 doi: 10.1038/nature25193
転写因子Mycは造血幹細胞と造血前駆細胞の調節に不可欠であり、造血系悪性腫瘍において重要な機能を担っている。今回我々は、これまで「スーパーエンハンサー」とされてきたMyc遺伝子の1.7メガ塩基下流に位置する進化的に保存された領域が、マウスとヒトにおいて、正常と白血病の両方の造血幹細胞の階層構造で、Mycの発現レベルの調節に不可欠であることを示す。マウスでこの領域を欠失させると、造血幹細胞および造血前駆細胞でのMyc発現が完全に喪失した。これによって、分化が停止した多能性前駆細胞の蓄積や、骨髄細胞とB細胞の喪失が引き起こされた。この表現型は、造血幹細胞においてMyc遺伝子のMx1-Creによる条件付き欠失によって生じる表現型を模倣している。このスーパーエンハンサーは複数のエンハンサーモジュールから構成され、これらはGFI1b、RUNX1、MYBをはじめとした一連の転写因子を動員する選択的な活性を持っている。各エンハンサーモジュールをそれぞれ欠失させたマウスの解析から、造血系階層構造のほとんどで見られる特異的なMyc発現レベルは、各エンハンサーモジュールの組み合わせと相加的な活性によって制御され、総合的に「血液エンハンサークラスター(BENC)」として機能すると考えられた。またBENCは、MLL–AF9によって引き起こされるマウスでの白血病の維持にも不可欠であることが分かった。その上、BENCモジュールの1つは、マウスの造血幹細胞および造血前駆細胞でMyc発現を制御しているが、ヒト急性骨髄性白血病幹細胞では芽球よりもクロマチン接近性を上昇させることも分かった。この差異はMYC発現や患者の転帰と相関した。BENCのようなエンハンサーのクラスターが、高度に組み合わせられた系を形成することで、正常な細胞階層構造において遺伝子発現の正確な制御が可能になり、また、悪性腫瘍ではこれらが乗っ取られている場合があると思われる。

