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がん:PTENはFBXL2に対抗してIP3R3とCa2+が仲介するアポトーシスを促進し、腫瘍増殖を制限する

Nature 546, 7659 doi: 10.1038/nature22965

小胞体上に位置するIP3(イノシトール 1,4,5-トリスリン酸)受容体(IP3R)群は、IP3生成を促す環境からの合図に応答して、ミトコンドリアへのカルシウムの「疑似シナプス的」供給を可能にし、酸化的リン酸化を促進する。しかし、持続的なCa2+の放出は、ミトコンドリアのCa2+過負荷と、その結果としてのアポトーシスを引き起こすことになる。哺乳類の3つのIP3Rの中ではIP3R3がCa2+依存性アポトーシスを担う主要因子だと考えられている。今回我々は、F-boxタンパク質であるFBXL2[ヒトで69種類存在するSCF(SKP1–CUL1–F-box protein)ユビキチンリガーゼ複合体のうちの1つが持つ受容体サブユニット]がIP3R3に結合して、それをユビキチン、p97およびプロテアソームが関わる分解の標的とし、ミトコンドリアへのCa2+流入を制限することを示す。FBXL2ノックダウン細胞やFBXL2非感受性IP3R3変異体をノックインしたクローンは、小胞体から細胞質へのCa2+放出が増えていて、Ca2+依存性のアポトーシス刺激に対する感受性が高まる。PTEN(phosphatase and tensin homologue)遺伝子は、ヒト腫瘍や、がんにかかりやすくなる症候群で変異あるいは喪失していることが多い。我々は、PTENがIP3R3との結合をFBXL2と競合すること、またPten−/−マウス胚性繊維芽細胞やPTENヌルがん細胞ではFBXL2依存性のIP3R3の分解が加速していることを見いだした。PTENヌル細胞に野生型PTENあるいは触媒能のない変異型PTENで細胞を再構築すると、IP3R3が安定化され、持続的なCa2+動員とアポトーシスが誘導される。ヒト前立腺がんでは、IP3R3とPTENのタンパク質レベルに直接的な相関性が見られる。細胞培養と異種移植モデルのいずれでも、分解されないIP3R3変異体はPTENの発現が低い、もしくは見られない腫瘍細胞を光線力学療法に感受性にする(この療法は光増感剤が可視光照射後にCa2+依存性の細胞毒性を引き起こすことに基づいている)。同様に、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼの阻害剤GGTi-2418によりFBXL2の局在状態を乱すと、異種移植腫瘍が光線力学療法に感受性になる。要約すると、本論文はミトコンドリアのCa2+過負荷を制限して細胞死を防ぐ新しい分子機構を明らかにしたものである。これはまた、PTENが脱調節されたがんでのIP3R3分解の阻害が有効な治療戦略になることの原理証明でもある。

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