Letter
発生生物学:多細胞系譜間の相互作用が多能性状態からのヒト肝芽発生を調節する
Nature 546, 7659 doi: 10.1038/nature22796
従来の多能性状態からの二次元分化では、器官形成過程で起こる多細胞間相互作用を再現できない。三次元オルガノイドは複雑な器官様の組織を作り出すが、それらを構成する異種の細胞集団における相互作用が細胞系譜の分化状態に影響を及ぼす仕組みは分かっていない。今回我々は、単一細胞RNA塩基配列解読技術を用いて、二次元培養で多能性状態から肝細胞様の細胞系譜が分化する過程を再構築した。次に、肝細胞、間葉系細胞、内皮細胞の相互作用を再構築して三次元培養で肝芽オルガノイドを誘導し、肝芽の発生の際の不均一性を解析した。その結果、肝芽の肝芽細胞は二次元培養の細胞系譜から分岐して、器官の出芽の特徴である上皮移動のシグネチャーを発現することが分かった。ヒトの胎児および成人の肝臓の単一細胞RNA塩基配列解読データを基準に三次元培養した肝芽を評価すると、三次元培養の肝芽と胎児肝臓細胞の間に明らかな相関が見られた。受容体とリガンドのペアリング解析およびハイスループット機能欠失評価系を用いる手法により肝芽でのシグナル伝達を調べると、血管内皮増殖因子(VEGF)を起点としたクロストークが内皮ネットワーク形成と肝芽細胞分化を増強することが分かった。我々の詳細な分子解析は、多細胞系譜間の相互作用がオルガノイドの発生を調節していることを明らかにしており、また、これまで解析が困難であったヒト肝臓発生の原理解明に迫るものである。

