化学:複雑な無機相場における2つの結晶構造型の加速された発見
Nature 546, 7657 doi: 10.1038/nature22374
新材料の発見は、そうした材料には元素組成候補と各組成の構造候補が多く、それらの探索を行う効率的な手法がないために阻まれている。例えば、拡張された無機固体構造の発見は、結晶化学の知識に加えて、元素比を系統的に変えていく時間のかかる材料合成に頼ってきた。特定組成の材料構造を予測することによって、また既知の結晶構造について組成を予測することによって合成に指針を与えるために開発された計算的手法は、注目すべき成功を収めている。しかし、組成が複雑な系については、単位格子や単位格子内の原子配置が既知構造とは異なる結晶構造をとり、定性的に新しく、実験的に実現可能な化合物を探索するという課題が残っている。既知結晶構造内の原子を置換することで多くの有益な特性が生じるるが、この方法だけを用いる材料発見では、材料系で最良の性能を見落とす恐れや、不完全な知識で設計を試みてしまう恐れがある。今回我々は、新しい2つの構造型が含まれる複雑な無機相場の領域を計算で特定して、これらの構造型を実験的に発見したことを報告する。この成果は、系の化学的・構造的多様性を捉えるとともに、現在知られている材料の組み合わせに対してエネルギーをランク付けできるプローブ構造を計算することで達成された。次いで、計算で得た相図の最低エネルギー領域を実験的に探索し、これまでに報告されていない結晶構造をとる2つの材料を得た。これらの結晶構造の特徴は、通常とは異なる構造モチーフを持つことである。今回の手法は、基礎となる知識基盤の拡大を通して効率的に合成に指針を与えたり計算ツールの予測力を強化したりすることによって、複雑な組成空間における系統的な新材料発見を加速するだろう。

