がん:骨髄性白血病におけるBCAA代謝の再プログラム化によるがんのプログレッション
Nature 545, 7655 doi: 10.1038/nature22314
細胞内代謝の再プログラム化は、さまざまながんでよく見られる特徴である。しかし、代謝の変化ががんの発生やプログレッションを直接調節するかどうかは、ほとんど分かっていない。今回我々は、分枝鎖アミノ酸(BCAA)に対する細胞質のアミノトランスフェラーゼであるBCAT1が、ヒトの慢性骨髄性白血病(CML)やCMLのマウスモデルで異常に活性化しており、機能的に必要とされることを明らかにする。BCAT1は、CMLのプログレッションに伴って発現上昇が見られ、白血病細胞において分枝鎖ケト酸をアミノ化することでBCAA産生を促進する。BCAT1の遺伝子発現あるいは酵素活性を阻害すると、細胞の分化が誘導され、in vitroおよびin vivoの両方において急性転化期CMLの増殖が妨げられた。安定同位体トレーサー実験と、核磁気共鳴法に基づく代謝解析とを組み合わせることで、BCAT1によるBCAAの細胞内産生が実証された。BCAT1ノックダウンによって引き起こされる異常は、BCAAの直接の添加により軽減することから、BCAT1は急性転化期CML細胞においてBCAA産生により発がん機能を発揮していることが示された。重要なことに、BCAT1の発現は、ヒト急性転化期CMLやde novoの急性骨髄性白血病で活性化されているだけではなく、患者の予後とも相関が見られた。また我々は、BCAT1発現の上流の調節因子として、Musashi2(MSI2)を見いだした。MSI2は発がん性のRNA結合タンパク質で、CMLの急性転化に必要なことが知られている。MSI2はBCAT1転写産物に物理的に結合し、白血病においてBCAT1タンパク質の発現を正に調節する。総合的にこの研究は、MSI2–BCAT1軸を介して活性化されたBCAA代謝の変化が、骨髄性白血病のがんプログレッションを引き起こすことを示している。

