細胞生物学:有糸分裂チェックポイント複合体の触媒反応的な速い会合の基盤
Nature 542, 7642 doi: 10.1038/nature21384
有糸分裂で娘細胞それぞれが母細胞からゲノムの正確なコピー1組を受け継ぐためには、母細胞の姉妹染色分体が、両極に分かれた有糸分裂紡錘体から発する微小管に結合しなくてはならない。この過程は双方向性結合として知られている。紡錘体形成チェックポイント(SAC)と名付けられた機構は、このような微小管の結合過程を監視し、双方向性結合が完了するまで、姉妹染色分体の分離と有糸分裂の完了を一時的に停止させることができる。SACがうまく働かないと、娘細胞では異数性と呼ばれる染色体数の異常が生じ、これは多くの腫瘍に見られる特徴である。HORMAドメイン含有タンパク質のMAD2(mitotic arrest deficient 2)は、SACエフェクターである有糸分裂チェックポイント複合体(MCC)のサブユニットの1つである。MAD2がMCCへと組み込まれるには、MAD2の開いたコンホメーションから閉じたコンホメーションへの構造変換が必要である。in vitroでは、MAD2の構造変換とMCCの会合は数時間かかるが、細胞内ではSAC応答は数分で確立される。今回我々は、所要時間のこのような相違を解明するために、精製した成分を用いてほぼ完全に近いSACシグナル伝達系を再構築し、MCCの会合をリアルタイムで観察した。MAD2の構造変換とMCCの会合に著しい加速が見られたのは、MPS1(monopolar spindle 1)キナーゼがMAD1–MAD2複合体をリン酸化した時点で、これがきっかけとなってこの複合体がMAD2変換の鋳型として働くようになり、その結果としてMCC会合の物理的プラットフォームの確立が促進される。従って、触媒反応的に起こる迅速なSAC活性化は、調節されたタンパク質間相互作用に依存していて、この相互作用がMCCの会合に必要なMAD2の自発的だが律速となっている構造変換を加速するのである。

