構造生物学:mTORC1の上流で起こるCASTOR1によるアルギニン検知の機構
Nature 536, 7615 doi: 10.1038/nature19079
mTORC1(mechanistc Target of Rapamycin Complex 1)は真核細胞増殖の主要な調節因子であり、細胞の同化や異化の過程を、増殖因子や栄養素(アミノ酸など)のような入力と協調させている。哺乳類ではアルギニンは特に重要で、免疫細胞活性化、インスリン分泌や筋成長のような多様な生理的効能を促進し、こうした影響は主にmTORC1の活性化を介している。アルギニンは、リソソームのアミノ酸輸送体SLC38A9、あるいはGATOR2と相互作用するCASTOR1(Cellular Arginine Sensor for mTORC1)を介して、GTPアーゼRagファミリーの上流でmTORC1を活性化する。しかし、mTORC1経路がこのアルギニンシグナルを検出して伝達する機構は分かっていない。今回我々は、アルギニンを結合したCASTOR1の1.8 Å分解能での結晶構造を示す。ホモ二量体のCASTOR1は、2つのACT(Aspartate kinase, Chorismate mutase, TyrA)ドメインの界面でアルギニンと結合し、これによって近傍にあるGATOR2結合部位のアロステリック制御が可能になって、GATOR2からの解離と下流のmTORC1の活性化が引き起こされる。我々のデータから、CASTOR1が原核生物のアスパラギン酸キナーゼのリシン結合調節性ドメインとかなりの構造的相同性を共有していることが明らかになり、このことはmTORC1経路がアルギニン感受性を獲得するために、古いアミノ酸依存性のアロステリック機構を利用したことを示唆している。まとめると、これらの結果は、mTORC1経路によるアルギニン検知の構造的基礎を確立し、哺乳類の栄養センサーの進化に関する手掛かりを与えるものだ。

